原点回帰、とは言うは易し、行うは難しという感がある。
私にとっての原点の1つは、体の弱い母をなんとかしたい、という事であったかも知れない。
私は高校を出て直ぐに家を出たから、母と暮らしたのは18年間。
鍼灸按摩の免許を取ってから3年目に母は亡くなった。
免許を取る前から、会うたびに治療はしていたけれど、年に1、2回が良いところで、
原点の1つである母の治療は、決して多くは行われなかった。
ただ、最後から2回目の治療の時に、腱鞘炎になった母の人差し指の治療をお灸でしたら、
「すごく良くなった」と初めて言って貰えて、そのことはとても印象に残っている。
香炉に線香をたてる度に、
私はその時の光景を思い出すのだ。
いつも無理はするな、とか、頑張りすぎるな、とかブレーキをかけてくる人で、
もっと進んで行きたい私にとって、それらの言葉は聞き流されるだけだったけれど、
鍼灸の勉強についてだけは、背中を押してくれていた気がしていた。
今の私には当時の母を治す技術があるのだろうか。
いつも線香のはく、煙を見ながら自身に問いかける、原点に対する答えは見つからないけれど
少なくとも、もっと力をつけたいと思う原動力にはなっていると思う。